いじめより離婚に悩む子どもたち
今回は、4月22日付ニュージーランド・ヘラルド紙に「Stressed children talk to the dead」(悩みを抱えた子どもは死んだ者と話す)という変わった見出しの記事が載っていたので紹介したい。
その記事は「悩みを抱えた子どもたちはしばしば既に亡くなった親族やペットと話すことで彼らの問題に対処している」と始まっている。
8歳から12歳のニュージーランドの子どもを対象に行われた「ストレスを与える問題は何か」という調査研究。質問を受けたある子どもは「ペットは大事な存在だから、死んだらとても悲しい。誰も話す相手がいないときはペットと話すんだ。ペットは返事をしてくれないけれど、話すと心配が消える」と語ったという。
またオークランド大学で国民の健康調査をしているフィオナ・ピエナーさんは「子どもたちにストレスを与える一般的な要因は29あり、そのほとんどは学校と家族生活からきている」と指摘している。
学校でのストレス要因は、いじめを受けたり、友達がいじめられているのを知っていたりすること。先生自身が仕事にストレスを感じているため、助けてもらえない場合。宿題が分からなかったり、宿題が忙しくてできなかったりといったことが挙げられている。
家族生活からくるストレス要因は、両親の不和や親の育児ストレスに起因するものが多い。両親が離婚した場合、子どもはどちら側についたらいいのか、どちらを選ぶべきかが分からず悩む。また、親と話せないという問題を抱えた子どもは「両親はいつも忙しそうだし、話し掛けにくい雰囲気で、自分の話を聞いてもらえない」と訴えている。
ピエナーさんは結論として、最も典型的な子どもの悩みは、ストレスを抱えている両親との生活だと指摘している。「親が悩んでいるのを見るのは最悪だよ。気分がめいってしまう」「親が落ち込んでいるときには自分のことを言えないし、むしろ何かしてあげなきゃいけないんじゃないかと感じる」といった子どものコメントを紹介している。
そして、子どもは両親の関係が悪いことを察知しても、その問題が離婚につながる深刻なものなのか、ささいなことなのか理解できないと説明している。
近年、ニュージーランドでも離婚率は上昇している。そのために結婚形態そのものが変わってきているようだ。この国では日本のように祖父母と同居するケースはほとんどないのだが、両親が離婚したため子どもが祖父母に預けられるケースはまれにある。そして母子家庭、父子家庭は年々増えている。
とはいえニュージーランドでは再婚率も高く、1999年度の統計では離婚者の90%が再婚している。そのため最近のニュージーランドの家族構成は複雑になっている。多くの子どもが義理の父親か母親と暮らしており、それぞれの親が再婚の時に連れてきた義理の兄弟もいる。
子どもは週末、一緒に暮らしていない方の実の親のもとへ泊まりに行ったり、1週間おきに実母と実父の家で暮らしたりするという、日本では考えられない柔軟な家族生活も見掛ける。
ちなみに日本の総務省統計局「世界の統計2005」の62カ国の離婚率(人口千人当たりの離婚件数)をみると、1位ロシア、2位ベラルーシ、3位米国、7位韓国(アジアで一番離婚率が高い)、9位オーストラリア、13位ニュージーランド、14位英国、22位日本。離婚率が低いのはカトリック教徒が多いイタリア、ラテンアメリカ諸国となっている。(マクリーンえり子=フィティアンガ在住)
【写真説明】
ヒツジとのふれあいを楽しむアジアからの留学生たち。牧畜酪農国ニュージーランドでは家庭のペットとしてヒツジや豚や馬を飼うことも日常的だ
コメントを残す